徒然日記

Dairiten1012の日記

徒然日記19

徒然日記19。これがメモ帳に書き込んだ最新の徒然日記。今回は大学の放送部やゼミで同期だったある女の子の話。

 

2017.10.25 15:43

 彼女は変わった人だった。
 独特なセンスのパーカーやスニーカーを着用して大学に来ていた。彼女の眼鏡はライトグリーンという、他に見たことない色のフレームだった。音楽の趣味も、平沢進が好きだと言っていた。話す言葉はいつも理路整然としていて、説得力があった。理知的な人だった。部活でやりたい放題で、時々放言をする僕を諌めるのはだいたい彼女だった。ユーモアがあり、ウィットに富んだトークができる人だった。話していて気持ちよいと思えるほどの人だった。彼女の作る企画案はとても魅力的だった。企画については、僕も頑張っていたほうだと自負してはいるが、彼女には敵わないと、素直に負けを認められるほど魅力的に映った。
 彼女のことを好きだったかと言われれば、僕はとても好んでいたと答える。ただ、恋だの愛だのという感情に基づいたものではなく、どちらかと言えば、興味や好奇心が根底にある。この人はどう生きてきてこんなに面白い人になったのだろう、この人はどう考えてこんなに面白いものを作れるのだろう、といったものだ。
 彼女とはゼミが一緒だった。部活の部長と副部長という関係であり、ゼミが一緒ということもあり、ゼミの帰りは途中まで一緒に帰っていたものだった。

 彼女は次第に部活にもゼミにも来る頻度が減り、そしてある日パタリと来なくなった。心配していたが、休学だか、自主退学だかをするという風のうわさが流れてきた。どうやら、家庭の事情があるらしいとのことだった。家庭の事情なら仕方あるまいと思い、もう一人の副部長を部長代行になってもらい、僕は部活で副部長という役職を盾にしてやりたい放題をしていた。

 ある日、彼女がゼミに来た。久々に会ったので結構嬉しく思ったことを覚えている。だが、ゼミ発表に対する質問時間での、彼女の質問は普段と違って精彩を欠いていた。
 その日は、久しぶりに一緒に大学を出た。歩きながら、僕は噂について尋ねた。
「大学辞めるってマジ?」
我ながら唐突で、気の利かない直球だと反省すべき切り出し方だったと今でも思う。
「うん、本当」
「マジかー。やっぱ家の事情なの」
「うん」
「そっかぁ、寂しくなるなあ」
僕が本心から出た言葉を何事もないかのように放ると、しばしの無音が訪れた。次の会話は、彼女が切り出した。
「…詳しく聞いてこないんだね」
「えー?家の事情で辞めるってんなら、俺が聞いてどうこうできるもんじゃないしな」
「ふーん。君のそういうところ、いいと思うよ」
「…そりゃあ、どうも」
その後は何か会話することなく、ただ二人で並んで大学前の交差点まで歩き、そして「じゃあね」「おお、またな」という挨拶をして別れた。それ以来、僕は彼女とは会っていないし、コンタクトも取れていない。部活の案件でコンタクトを取ろうとしたが、返信はさっぱり来ることはなかった。

これは、僕の全く何もなかった大学生活での、何かあったようで何でもなくて、何かにしようとも思わなかった話。

2017.10.25 16:38

 

○非常に才知ある人だと思っているので、彼女が今何をしているのかと、ふと思う時がある。